最高裁判所第二小法廷 昭和22年(れ)257号 判決 1948年3月27日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人藤原高の辯護人松下幸徳の提出した上告趣意書は「本件第二審裁判所ハ辯護人ニ最終ニ陳述スル機會ヲ與ヘザリシモノナリ。昭和二十二年九月二十九日福岡高等裁判所ニ於ケル公判審理ノ公判調書ニ依レバ辯護人ニ對シ最終ニ陳述スル機會ヲ與ヘザリシ事明白ナリ。刑事訴訟法第四百十條十七號ニ依レバ「被告人又ハ辯護人ニ最終ニ陳述スル機會ヲ與ヘサリシトキ」ト記載サレアリ。辯護人ヲ付シタル事件ニ付テハ必ズ辯護人ニ最終陳述ノ機會ヲ與ヘザル可カラズト思料セラル。依テ原判決ハ破毀セラルルモノトス」といふのであるが、刑事訴訟法第三百四十九條第三項には「被告人又ハ辯護人ニハ最終ニ陳述スル機會ヲ與フベシ」と規定せられているのであって、辯護人の附いている事件でも、被告人か、辯護人かのどちらかに對して最終に陳述する機會をあたえれば、それでよいのであって、本件辯護人の主張するように、被告人、辯護人の双方にその機會をあたえなければならぬものでないことは、右刑事訴訟法の條文の文理解釋上きわめて明白である。本件において、原審の裁判長が被告人に對して、最終陳述の機會をあたえたことは、原審の公判調書に照し、まことに明瞭であるから、その上更に、辯護人に對して、その機會をあたえなかったからといって、少しも違法ではない。論旨は理由がない。(その他の上告論旨及び判決理由は省略する。)
右のとをり本件上告は理由がないから、刑事訴訟法第四百四十六條に從ひ主文のように判決する。
以上は全裁判官の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)